周りでは新型コロナウイルスの感染者が急増し、今年も感染予防に努めながらの夏休みとなりましたね。
今日は、近年感染者が急増している梅毒についてお話ししたいと思います。
梅毒とは
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体の感染によっておこる性感染症です。
梅毒トレポネーマがリンパ節に侵入し、時間の経過とともに血液を巡って全身に広がっていきます。
粘膜や皮膚の直接の接触によって感染するので、主に性行為やオーラルセックスやキス、アナルセックスなどによって感染します。
また、感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染する場合もあります。(先天梅毒)
感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、様々な症状が出現しますが、症状のない場合もあるので注意が必要です。
梅毒の症状
早期顕症梅毒 第Ⅰ期:感染後約3週間後、感染がおきた部位(陰部、肛門、口など)に、初期硬結(しこり)や硬性下疳(潰瘍)が見られたり、リンパ節の腫れなどの症状が出てきます。
これらは、無治療でもやがて症状がおさまってきますが、病原体がいなくなったわけではないので、他の人にうつす可能性もあります。
早期顕症梅毒 第Ⅱ期(感染後数か月):第Ⅰ期の症状が一旦消失したのち4~10週間の潜伏期を経て、手のひらや足の裏など、全身に赤い発疹(梅毒性バラ疹)が出てきます。
また、発熱、倦怠感等の全身症状に加え、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状を呈することがあります。
第Ⅰ期同様、無治療でも数週間~数か月で症状はおさまってきます。
晩期顕症梅毒 第Ⅲ期(感染後3~10年):感染後数年が経つと、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。
晩期顕症梅毒 第Ⅳ期(感染後10年以上):さらに無治療のまま年数が経過すると、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。
現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕症梅毒に進行することはほとんどありません。
梅毒の検査
血液検査と医師による診察で判断します。感染してから数週間ほどは、検査しても陽性反応が出ない潜伏期間があるため、感染後3週間ほど経過してから検査結果を確認する必要があります。
梅毒の治療
一般的には外来で処方された抗菌薬(ペニシリン剤)を服用します。
病変の部位によっては入院のうえ、点滴で抗菌薬の治療を行うこともあります。
一度症状がなくなっても、病原体は体内に残っているので、自己判断で薬の服用や治療ををやめることはせず、医師が治療を終了とするまで、根気強く治療を続けることが大切です。
梅毒の予防
コンドームを使用することで予防の効果はありますが、コンドームが覆わない部分の皮膚や粘膜に症状があると感染します。
梅毒は、治療をしなくても症状がなくなることがありますが、自然に治ることはありません。
早期に治療を行えば治る病気ですので、異常があった場合は早めに検査し、医療機関を受診しましょう。その際、大切な人を守るため、パートナー等と一緒に検査を受けることも大切です。
また、一度完治しても、感染を繰り返すことがありますので、再感染の予防が必要です。
≪参照資料≫
梅毒に関するQ&A(厚生労働省ホームページ)
梅毒とは(国立感染症研究所)
日本の梅毒症例の動向について(国立感染症研究所)