梅毒の感染者数が急増しています。
国立感染症研究所が週ごとに公表する感染症発生動向調査(速報値)によると、今年初めから10月30日までに10,465件の梅毒の症例が報告され、2021年の年間の症例数7,875件を大きく上回り、すでに1万件を超えました。
梅毒は昔の病気、というイメージを持っている方もいるかと思いますが、2010年以降、梅毒の感染者数は徐々に増加傾向にあります。
(国立感染症研究所感染症動向調査より作成 ※2022年は10月30日報告分まで)
2010年には600件ほどだった梅毒患者の報告件数が、2018年には全国で7,000件近く報告され、その後いったん減少傾向が見られましたが、コロナ過の2021年に再び増加に転じました。
(国立感染症研究所感染症動向調査より作成 ※2022年10月2日報告分まで)
また、年齢別でみると、男性は20~50代と幅広い層で感染者がみられますが、女性は20代の若い人たちが感染者の中心となっています。
感染者が増加した要因としては、はっきりした理由はわかっていませんが、SNSの普及により、不特定多数の人と性交渉をする機会が増えたことや、性風俗サービスの多様化、また感染の流行を受け、検査数が増加したことも理由の一つと考えられています。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体の感染によっておこる性感染症です。
梅毒トレポネーマがリンパ節に侵入し、時間の経過とともに血液を巡って全身に広がっていきます。
梅毒は、症状が現れる時期と症状が自然に消える時期を交互に繰り返しながら進行します。
感染後約3週間~6週間後の第Ⅰ期では、感染がおきた部位(陰部、肛門、口など)に、初期硬結(しこり)や硬性下疳(潰瘍)が見られたり、リンパ節の腫れなどの症状が出てきますが、無症状の場合もあります。
しかし、症状が出た場合でも、無治療のままでいても、やがてそれらの症状は消失していきます。
第Ⅰ期の症状が一旦消失した後、4~10週間の潜伏期を経て、手のひらや足の裏など、全身に赤い発疹(梅毒性バラ疹)が出てきます。これが第Ⅱ期です。
この時期には、発熱、倦怠感等の全身症状に加え、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状を呈することがあります。
第Ⅰ期同様、無治療でも数週間~数か月で症状はおさまってきます。
さらに無治療のまま年数が経過し、晩期顕症梅毒に進行すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生し、やがては心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。
現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕症梅毒に進行することはほとんどありません。
感染予防としては、不特定多数の人との性的接触を避けることや、コンドームを使用することが大切です。
梅毒は、治療をしなくても症状がなくなることがありますが、自然に治ることはありません。
早期に治療すれば治る病気ですので、性器などの感染部位にしこりがあるなど、梅毒が疑われる症状がある場合は、早めに検査し、医療機関を受診しましょう。
【梅毒の検査はこちらから】
≪参照資料≫
日本の梅毒症例の動向について(国立感染症研究所)
梅毒とは(国立感染症研究所)