国立感染症研究所が週ごとに公表する感染症発生動向調査(速報値)によると、今年初めから9月3日までに10110件の梅毒の症例が報告され、今年の梅毒の感染者が10,000人を超えました。
これは、昨年より約2か月早いペースとなります。
また、年齢別でみると、男性は20~50代と幅広い層で感染者がみられますが、女性は20代の若い人たちが感染者の中心となっています。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体の感染によっておこる性感染症です。
感染後3~6週間の潜伏期間を経て、感染がおきた部位(陰部、肛門、口など)に、しこりや潰瘍が見られたり、リンパ節の腫れなどの症状が出てきますが、症状が出ない場合もあります。
これらの症状は、治療をしなくても、やがて消えていきます。
梅毒は、症状が現れる時期と症状が自然に消える時期を交互に繰り返しながら進行します。
しかし、症状が出ていない時期でも、病原体がいなくなったわけではないので、他の人にうつす可能性があります。
女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。
無治療のまま年数が経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生し、やがては心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。
感染者が増加した要因としては、はっきりした理由はわかっていませんが、SNSの普及により、不特定多数の人と性交渉をする機会が増えたことや、性風俗サービスの多様化、また感染の流行を受け、検査数が増加したことも理由の一つと考えられています。
感染予防としては、不特定多数の人との性的接触を避けることや、コンドームを使用することが大切です。
梅毒は、治療をしなくても症状がなくなることがありますが、自然に治ることはありません。
現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、重篤な症状まで進行したり、死に至ることはほとんどありません。
早期に治療すれば治る病気ですので、性器などの感染部位にしこりがあるなど、梅毒が疑われる症状がある場合は、早めに検査することが大切です。
≪参照資料≫